私の中庭(コートハウス)論| 株式会社 横山彰人建築設計事務所 設計コンセプト


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『私の中庭(コートハウス)論』

当事務所のホームページを開くと、すぐに「中庭のある家」(コートハウス)が目に入ります。
お客様から「中庭のある家」だけしか設計しないのですか? とか、
どんなメリットがありますか? という質問がよくあります。 
ここでは、そんな質問にお答えしながら、
あらためて私の中庭(コートハウス)論をご説明したいと思います。

はじめに

 私の設計では、中庭のある家だけを多く設計しているわけではありませんが、 現在の悪化する一方の住宅環境や家族が置かれている現代社会の現状を踏まえ、その中で住宅設計を捉えると、「中庭のある家」(コートハウス)に設計の主眼を置くことは間違いではないことだと考えています。
 単にデザインやインテリア性の高さから「中庭のある家」(コートハウス)を設計のテーマにしてる訳ではなく、中庭のメリットといわれる通風、採光、防犯などは、確かに重要ではありますが、それもひとつの要素と考えています。
 私は物理的なメリットより、中庭のある家(コートハウス)がもたらす精神的、心理的な影響のほうがメリットとして大きいのではないかと思っているのです。中庭のある家(コートハウス)に暮らすことによって、家族、大人と子供、高齢者にどんな恩恵や変化をもたらすのかを、物理的なメリットを含めて考えていこうと思います。

第一回 住宅環境の現状

 都市住宅における敷地は、ますます細分化、狭小化をたどる一方です。狭い敷地において、隣家とのプライバシーを守りつつ、いかに永続的に太陽の光と通風を確保するかは、都市住宅において、大きなテーマになってきています。にもかかわらず、敷地に対して建物をセットバックし、前面道路側に庭やガレージを配置する在来型プランが多く、ある日突然隣に3階建てが建設されたり、悲劇的な事例が後を絶ちません。設計段階の敷地の深い読み取りと、有効利用が求められます。
  中庭のある家(コートハウス)の発想は、敷地いっぱいに塀や建物を建てることにより(私の設計では隣地との距離は30㎝。これは足場をかける最少寸法です。状況によって隣地との間は10㎝としています)、中途半端な空地を無くし、空地は全て庭か室内空間に取り込むことができます。つまり敷地全体を余す所なく住空間として設計し、自然と人、室内と室外の緊密な関係が造り出せるのです。その結果、在来プランと比べて開放的で明るいプランが生まれ、中庭 (コート) の形状も敷地の形状に合わせてL型、U型、ロ型とすることで、自由なゾーニングができます。敷地が狭小になるほど、中庭のある家(コートハウス)は有効になってくるはずです。

第二回 子どもの成長と中庭(コート)1/ 就学前児童期

子どもの成長に必要なこと

 住まいや住まい方は、子どもやその家族の暮らしと密接な関係にあることは言うまでもありません。子どもにとって家中が遊び場であり、思春期に至るまで子どもは遊びを通して成長・発達していきます。遊びを通してテリトリー(なわばり)形成能力を育て、居場所も自分の力で見出していきます。遊びの場がどのように確保されているかが大事なのですが、現実の住まいには部屋に家具や物も多く、遊び場が奪われているのが実態です。また親自身がそのことに気が付いていないことが多いのです。
  こんなデータがあります。5歳児が1日何歩歩いているかの調査では、1987年には12000歩、1997年には8000歩、2000年には4900歩、近年では4000歩を割っています。高層階のマンションに住む子どもはさらに少ないと言われています。遊ぶためのスペースを住まいの中に確保する必要はそこにあります。
 

就学前児童期における中庭(コート)の効用

 中庭のある家(コートハウス)のメリットは明るさ、風通し、防犯などの物理的なこともありますが、むしろ精神的、心理的に及ぼす影響のほうも大きいと第一回で話しましたが、子どもにとって中庭(コート)の存在はどんな効用があるのか考えてみましょう。

①安全が確保された遊び場として、室内では不可能な創造的な遊びまで可能になります

②テリトリー(なわばり)形成力を育てる。用途が決められていない中庭(コート)はいい環境

③居場所としての機能

④子どもなりのストレスが癒される場として、緑や花がある中庭(コート)は有効。(大人も同じ)

⑤中庭(コート)の草や花は子どもにとっても身近になり、情趣的な教育にも良い。

 居場所について説明を加えると、居場所には2種類あります。ひとつは子どもにとって心地よい場所。もうひとつは、子ども自身で自分を発揮できる場所です。特に0歳から就学前児童期の子どもには、心地よい場所を親としてどう用意してあげられるか重要です。中庭のある家(コートハウス)はそんな選択の場を広げてあげることでもあります。

第三回 子どもの成長と中庭(コート)2/学童期・思春期

子供の成長に必要なこと

 就学前や小学校低学年の子どもにとって、家は遊びの場として機能が求められますが、小学4年生頃から、家族という認識や、プライバシーの観念、そして自分だけの部屋を求める欲求がめばえます。同時に、この時期は協調性、創造性、さらにコミュニケーション能力を育む大切な時期であり、失敗すると家庭内暴力や不登校に発展するといわれています。
 以前の社会は、子どもの成長過程におけるしつけや、上記の項目は、家庭、学校、地域社会がその役目を担っていましたが、学校と地域社会はその機能が崩壊し、家庭だけが責任を負うことになりました。特にこの時期の子ども部屋の与え方、その時期、どんな部屋といったことが大事になってきますが、親としてあまり考えず、子どもには子ども部屋と機械的に個室を与えている場合が多いのが現実です。
 子どもの成長過程で「家族空間」(家族の人間関係を含んだ生活空間)という意識を持つことが大切です。
 

学童期・思春期における中庭(コート)の効用

 学童期・思春期の子供にとって「中庭(コート)のある家」はどんなかかわりが生まれるでしょうか、考えてみましょう。

①「誰も見ていない場所」、「誰も見ていない時間」をできるだけ与えない部屋は、いい子ども部屋の一要素だと思います。「中庭(コート)のある家」は中庭を囲むようにリビングや子ども部屋が並びますので、家族がどこにいても子どもの気配がわかり声も届きます。

②ストレス軽減や心の居場所として有効
 子どもは学校や家庭などでさまざまなストレスを受けます。また近年、ともだち関係を含めた人間関係が築けずにストレスがたまる子どもが多いのですが、子ども部屋では勉強部屋と位置づけられているので、ストレスの軽減は難しいでしょう。無目的な場である中庭(コート)は、自然が包み込んでくれます。ストレスが癒され、居場所づくりにもいいはずです。

③中庭(コート)における「家族の年中行事」
 隣家からのプライバシーが守られた中庭は、秋のお月見、クリスマスツリーの電飾やこれまで家の中で出来なかった行事で、新たな親子のコミュニケーションが生まれます。

④子供の成長過程を見ながら、中庭いっぱいに遊び回れるウッドデッキにしたり、砂場、樹木、家庭菜園などにつくり変え、子どもとともに楽しむことができます。
 
「中庭のある家」(コートハウス)は、子どもの成長過程において「生きる力」を育む住まいと言えるかもしれません。

第四回 夫婦と中庭(コート)1

住まいにおける夫婦にとっての中庭(コート)

 これまで子どもにとって「中庭(コート)のある家」が成長過程でどう影響するのかその関係性を述べてきましたが、中庭(コート)はむしろ夫婦や高齢者つまり、大人にとって必要なのではないかと思います。
 

住まいの今日的状況

 これまで家づくりは、その動機も「子どものために建てる」が最も多いように、以前から子ども中心の家づくりをしてきました。たとえば、子ども部屋の位置は、環境の良い場所を占め、それに引き替え、夫婦の寝室は狭く寝るスペースしかないのがほとんどです。高齢化社会になって、男女とも平均寿命も大きく延びました。家族のライフスタイルを考えたとき、子どもの部屋が必要なのは仮に小学4年生頃から大学を卒業し就職までと考えると14、5年ほどのことでその後、夫婦で過ごす20年~30年の時間のほうが圧倒的に長いのです。
 家族は空間と共にあって、空間の占め方で家族の人間関係も大きく変わってきます。子ども中心の住まいから、夫婦を中心に過ごしていく住まいを視野に入れながら家づくりを考えるべきだと思います。なぜなら子供が巣立って行っても、その後の子ども部屋の有効利用は考えられていません。子ども部屋は空いたままか、物置か、妻が子ども部屋に移って、夫婦別寝室になるかいずれかで、家全体を見直すリフォーム等も考えられていないのが現状です。住宅産業は便利、快適な商品には熱心ですが、住まいのソフトの部分は、何の提案もありません。
  家庭内別居や離婚はどの年代にも多く、原因も小さな不満の積み重ねが元になっていると思えますが、その不満には往々にして住まいがかかわっているケースが多いのです。その不満の原因を吟味してみるとお互いの居場所がどれだけ確保されているかにたどり着きます。
 子育てに専念する20代~30代、子どもの学校が終わり家を出る40代~50代、その後夫婦で過ごす生涯の時間。それぞれのシチュレーションの中で、家族から個人として住まいに求めるものも変わります。
 一人で過ごす時間と空間は、この時代ほど必要と思いながら、私の設計する家でも夫の書斎が求められても妻の個室はありません。データでは、8割以上の主婦が個室を求めています。子育てに疲れたとき、誰にも邪魔されず一人で読書をしたいとき、ストレスを解消したい時、住まいの中で見つけられますか。そんな時、住まいの同室空間の中に自然の中庭(コート)があれば心は癒されるはずです。

第五回 夫婦と中庭(コート) 2

Sさんにとっての中庭(コート)

 私の設計した「中庭(コート)のある家」に住んでおられるSさんのお話です。Sさんの住まいは玄関に入ると長いベンチがあって、目の前のインドアの中庭には、3m以上の竹が植えられています。職業はIT関係でとても忙しく、帰りはいつも11時過ぎで、会社では常にストレスにさらされている状態だそうです。
 Sさんは帰ってくるとしばらくの間、ベンチに座って竹林の先の夜空を見上げるのだそうです。ある夜は、月の光やその光が竹の林に降り注いでいるのをじっと見上げていると一日の疲れや、ストレスも癒され、優しい気持ちになるということです。
 Sさんにとって中庭(コート)は、気持ちを切り替え、明日の再生産の場として、とても大切な居場所であり、なくてはならない場といわれています。
 

中庭(コート)空間は、大人が求める居場所

 夫が住まいに求めているものと、妻が住まいに求めているものは当然異なりますが、共通しているのはともに「家庭の中に自分のスペースがほしい」、「自分一人になれる場所がほしい」ではないでしょうか。言い換えれば、自分自身の居場所の確立を望んでいるともいえますが、住まいの中にどこにも見いだせない現状がストレスを生んでいます。
 子どもが求める居場所は、成長過程で親が居場所を見つけてあげなければなりませんが、大人は家づくりの段階で、どんな暮らしを展開しようとするのか、どんな家族関係を築こうとするのかを考え、また夫婦がそれぞれの居場所を含めた検討をしておくべきなのです。夫婦を結ぶ絆それが<住まい>なのだと思いますが、現実はあまりにも安易に住まいを考え、家づくりをしているような気がします。
 
 中庭(コートハウス)の歴史は当初自然の猛威から身を守るため、防壁や部屋で囲んで真中に中庭(コート)をとった形態が発祥でしたが、現代は都市住宅の置かれている環境悪化や、個人の自立、そして囲まれて自分一人になれる機会に恵まれるためストレスから逃れる場として中庭(コート)は有効に働くのではないかと考えます。

第六回 二世帯住宅・同居と中庭(コート)1

二世帯住宅の設計

 二世帯住宅といってもその形態は様々です。親世帯と子世帯との間でどこまで分離し、共有するかによって、二世帯住宅の性格付けが分かれます。たとえば夫婦の寝室、リビング、ダイニング・キッチンは別々にし、その他は共有の場合と、寝室、浴室、洗面・洗濯室は別々にし、その他は共有の場合とでは、人間関係も家族の距離の取り方も大きく異なってきます。いずれにしても二世帯住宅の設計は間取りにおいては一緒に暮らすことが、お互い違和感を感じず、暮らしが一体になれる人間関係を、どう一つの家の中に作っていくかが設計の要点になります。
 二世帯住宅の場合、中庭(コート)を設計に取り入れるとしたら、どんなメリットがあるのか、ハード面と、ソフト面から考えてみたいと思います。
 在来型の家で最も多い間取り(平面プラン)は、nLDK型(nは部屋数)の間取りです。玄関に入ると廊下があり、両サイドに部屋が並ぶといった中廊下型の住まいで、現代のほとんどの家がこんな描写の中に納まっています。昔も今も、陽あたりと、風通しは、日本における健康な家づくりのキーワードです。そのことが分かっていながら、陽があたらず、風通しも悪い中廊下型の住まいを選択してしまうのはなぜでしょうか。この中廊下形式で二世帯住宅を考えると、独立された部屋は、ドアを閉めれば家族の気配は全く分からず、室内の
風通しを悪くするばかりでなく、これでは人と人、家族の心と心の風通しをも妨げてしまいます。
 

中庭(コート)をもった二世帯住宅の場合

 中廊下を無くし、リビング、ダイニングを含め、それぞれの部屋を全て中庭に開口部を持つようにします。間取り的にはそれぞれの部屋とリビング、ダイニングをどうつないでいくか、そのことによって「広がりのある空間」をつくり出していきます。どの部屋も明るく風通しがよい住まいが実現します。そして、中庭(コート)を通して家族関係で大切な「姿が見える」「声が聞こえる」「様子がわかる」が可能になり、たとえ会話を交わしていなくても、お互いの理解度は深まります。
 二世帯住宅において三世代が一緒に暮らす以上、トラブルの種はいくつも生じるはずです。そんな紛争の種をできるだけ減らす、住まい方の工夫や、役割も中庭(コート)はもっていると考えます。
 次回は中庭(コート)自身が陽あたり、風通し、のほかにどんなメリットがあるか、考えてみたいと思います。

第七回 二世帯住宅・同居と中庭(コート)2

 寓話(ぐうわ)でヤマアラシノジレンマという話があります。 「ある寒い日に一組のヤマアラシがお互いに身体を暖め合っていました。ところがお互いの棘が刺さり痛い、でも離れると寒い。こうしたことを繰り返しているうちに、痛くもなく、寒くもない距離を見つけていく」というお話です。この寓話は、物理的な距離から生まれる人間関係や、個人対個人の心理的距離を、どううまく作るのかという、二世帯住宅に住み始めるにあたって、様々な示唆を教えてくれます。
 二世帯住宅のもう一つの面は、お互いが経済的合理性を求めた妥協案という側面もあります。従って三世代が限られた空間に住めば、小さな感情のぶつかり合いは避けられず、別々に暮らしていたほうが、お互い良かったなどというケースも結構多いようです。なまじ血縁であるだけに、抜き差しできないところに追い込まれ、不幸な家庭にしてしまうケースも多いのです。
 二世帯住宅がうまくいく理想的な平面プラン(間取り)はありません。その家族によって事情が全て異なります。家族の状況に合わせて、その家族に最もふさわしい住まい方とその舞台をつくりあげるしかありません。
 二世帯住宅を成功させるのは、私は二つの要素が必要と考えています。一つ目は平面プラン(間取り)の検討。自分の家族にとって二世帯住宅はどんな間取りがいいかをよく検討する。これは簡単なようでとても難しい作業と思いますが、陽当り、風通し、家族の気配、が分かることを軸に各部屋のつながりや、広がりのある空間を考えていきます。
 二つ目は、いわゆるソフトの部分です。いくら陽あたりや風通しが良くてもソフトの部分がうまく機能しなければ失敗に終わります。親夫婦、子供夫婦の間でお互いが理解しあえるまでしっかりと話し合い、家の使い方まで突っ込んだルールをつくり、うまくいくよう工夫していくことが大事です。

 中庭(コート)のある家は、上手に使うことによって、親世帯と子世帯の緩衝的な役割を持ち、様々な生活のシーンによって、居場所の提供、個人の精神的癒し空間としてとても有効な空間になるはずです。二世帯住宅がうまくいくために上記の要素を網羅することは、はじめて家づくりをする家族にとって、ハードルが高く無理ですので、建築家との共同作業は必要と考えます。

第八回 二世帯住宅・同居と中庭(コート)3

 単体家族、二世帯住宅や個人の領域を考えたとき、中庭(コート)は、暮らしの中で実に多くのステージを提供します。中庭(コート)を通じての交流、触れ合いはお互いの距離感を見つけていきます。中庭にどんな要素をもたせるか、その家族によって異なりますが、ここではその利用事例をあげてみます。ぜひ自分の家族にとってベストの利用方法を考えていただければと思います。
 また、中庭(コート)は室内の部屋と違い、家族のライフスタイルや家族構成の変化によって容易に変えることができますので、家族と考え変えていく作業も楽しいでしょう。

記念樹

 両親、夫婦、子どもと一緒に植える記念樹。樹の成長とともに家族も成長していく。記念樹はどの部屋からも見え、思い出に残り、家族共通の話題を提供します。花や実がなる樹ならなお楽しいかもしれません。
 

縁側空間

 かつての縁側は外と内の境界域。外でもなく内でもない中間的なスペースであり、近隣とのコミュニケーションの場として、日常生活の中で子どもたちとお年寄りが自然に触れ合う場でもありました。設計の工夫によって縁側と同じような役割を中庭(コート)に求めることもできます。
 

家庭菜園

 丹精込めて作る菜園は作る人の生きがいになるかもしれません(たとえば、おばあちゃんが作った野菜など)。収穫されたものを家族みんなで食べれば会話がはずみ、家族の絆も深まります。家族全員から見守られているということが大切です。
 

多様性と可能性

 囲われた中庭は安心できる半外部空間。三世代揃っての食事、バーベキュー、近隣や友人を呼んでの接待、子どもとの水遊び。時間と空間を共有しているという安心感があり、活用の仕方によって相互の理解を深め、たくさんの楽しさを演出できます。
 

居場所、癒し空間

 住まいにあえて目的を持たせない自然の中庭(コート)があることは、住む人の心に余裕が生まれます。様々な状況やその時の気分によって自由に使うことができる。一人の読書、コーヒータイム、趣味を楽しむ場、アスレチック、ヨガ、等。自己確認や生産の場、そして様々なストレスを癒す場として有効なはずです。

第九回「中庭(コート)のある家」のデメリット
といわれることについて 1

 これまで第一回から中庭(コート)のある家の素晴らしさを、物理的(陽当たり、風通し、明るさ)なメリットと精神的(家族の気配、癒しの場、居場所、精神の安定)な役割について述べてきました。
 しかし、中庭(コート)のある家に住みたいと思いながら、あきらめてしまう方も多いようです。その理由は敷地が狭いという理由のほか、ネットで「中庭のある家」を検索すると、メリット(長所)とデメリット(短所)が掲載されていて、デメリットを気にしてしまうことが多いようです。
 中でも中庭を作ると、一般の家より建設コストが上がるということが不安、という理由が多いようですが、とても残念でもったいない気がします。どんな家の建て方でも、メリットとデメリットは背中合わせにあるものです。情報があふれるこの時代は、ネットで書かれていることもあくまでも一般論です。設計の工夫や考え方によって、デメリットがメリットに変わったり回避する方法や、極力小さくすることは可能です。そのうえでメリットを最大限生かすことができる計画をすべきなのです。
 一般的にインターネットでデメリットといわれる項目をピックアップして見ました。大きく分けるとコスト、平面プラン、メンテナンスの項目に分けられるようです。コストはもちろん建築金額のことですし、平面プランは生活動線や間取りのこと。そしてメンテナンスは維持管理のことです。それぞれ一般の建物から比べるとデメリットと指摘されていますが、本当にそうでしょうか。次回は項目別にデメリットといわれる部分を考察していきます。

第十回 「中庭(コート)のある家」のデメリット
といわれることについて 2

「中庭(コート)のある家」のデメリットといわれる項目には、下記のようなものが挙げられているようです。

①外壁が多くなるため、建築費用が上がる
②平面形状が凸凹になるため建物の強度が得にくい
③動線が長く、複雑になる
④中庭に面積を使うため、居室スペースが小さくなりやすい
⑤窓が大きくなるので、断熱性能が落ちやすい  

 これらのデメリットは、インターネットに掲載されているいくつかの記事からピックアップしたものです。結論から言いますと①~⑤については、設計者と施工者のレベルが高ければ解決できる項目ばかりです。少し難しい言い方になってしまいますが、在来工法の建て方ならば、仮に建築がお粗末でも庭の植栽などによって住居全体の質をカバーできる部分もありますが、中庭(コート)のある家は、敷地全体に親密度が高まるため、デザイン密度や建築の質を上げることが求められます。従って設計者選びに失敗すると、デメリットといわれる項目が、現実的なものになってくると思います。それだけ設計者の実力が問われるといってもいいと思います。
 ①はデメリットの中でも筆頭格のようですし、お客様にとって最も心配な所です。少し長くなりますが、説明していきます。
 家の総工事金額は、大きく分けると、構造、基礎といった躯体工事、造作、内装、設備、外構工事に分けられます。中庭(コート)があるL型、ロ型といっても一般の建物とくらべて技術的に難しい訳ではありませんから、大工さんを含めた職人の手間は、面積が同じであれば、特に変わりません。また凸凹があって壁の面積は増えますが、壁材が増えたところで
それほど大きな金額にはなりません。むしろ中庭(コート)を採用することによって、金額が減額になる部分もあるのです。もともと中庭(コートハウス)のある家の設計は、敷地いっぱいに建てることにより中途半端な空地をなくし、空地はすべて中庭(コート)として生かそうとする発想です。従って隣地境界いっぱいに建てますから、玄関に面する以外の塀工事は不要になります。その結果、私の事務所では、総工事金額では中庭(コート)のある家が一般の家より建築コストが高いということはありません。

*デメリットとして建築費用が上がると指摘するなら、中庭(コート)のある家にすることによって不要になる工事、減額になる項目も同時に取り上げないと、建てる方の不安を煽るだけになってしまい、片手落ちではないでしょうか。塀のほかにも、隣地境界に接する壁面には最少の風通しや換気の窓しか設けませんので、その分の金額も抑えられます。

    建築工事金額が上がることを心配されて、中庭(コート)ある家に魅力を感じながら、断念する方も多いのですが、心配なく挑戦してもらいたいものです。悩んでいる部分があれば、ご相談ください。


第十一回 中庭(コート)のある家」のデメリット
といわれることについて 3

 この回では、前回デメリットで上げた②~⑤までの項目を説明していきます。どのデメリットも設計の工夫によって解消できます。

②平面形状が凸凹になるため建物の強度が得にくい。

 どんなに良い建物でも、中庭をつくることで建物の構造が弱くなってしまうのは論外です。建物は一般的に、正方形や長方形の形が構造的に強いと言われますが、室内の間仕切りや、構造壁のバランスが悪ければ、地震には弱い建物になってしまいます。L型やロ型であっても、壁量のバランスを考え、壁や梁の補強をし、特にL型の場合は地中梁で繋げたり、梁を回して強度のバランスを取れば、強度が落ちる心配はありません。
 

③動線が長く、複雑になる

 私の経験から、中庭(コート)のある家をつくっても、動線が複雑になることはありません。単に悪い事例を取り上げているのではないかと思います。どんなに魅力的な中庭(コート)をつくっても、動線が複雑になっては家族の会話やスキンシップが取れない事態につながっていきますので、いい結果にはなりません。私の設計の場合は、限りなく廊下0(ゼロ)に近い間取りを心がけていますので、間取りはシンプルです。廊下が多くなるとコスト的に無駄であるばかりでなく、どうしても家族の気配が分かりにくくなり、家族のコミュニケーションも取りにくくなってしまいます。リビング・ダイニングを中心とした空間を、無駄な空間をつくらずにどうつないでいくかが、設計のポイントになります。
 

④中庭に面積を使うため、居住スペースが小さくなりやすい

 内容は③と一部重複しますが、中庭(コート)をつくることによって居住空間が減ることはありません。前述のように中庭(コート)をつくる場合、建蔽率(けんぺいりつ)を守った上で建物を隣地境界線に接近させることによって、中途半端なスペースをなくし、空地は全て中庭に生かそうとする建て方ですので、居住スペースが小さくなることはありません。必要な居住面積を確保しつつ中庭をどう生み出していくかが、設計の工夫のしどころです。
 

⑤窓が大きくなるので、断熱性能が落ちやすい

 住まいの快適さは、風通し、居心地の良い間取り、気密性など全体のバランスの上に成り立っています。快適さや空間の豊かさを実感できる、吹き抜けやトップライト、そして窓の大きさにしても、熱損失をカバーし、断熱性能を上げる断熱サッシや床暖房、通風計画など設計の方法によって解決できますので心配はありません。
 

 上記の説明では十分ではなかったかもしれませんが、私にとっては一般的に中庭のデメリットといわれることは、デメリットと感じません。建築ばかりでなく、どんなものでもメリットとデメリットは背中合わせにありますが、住まいの場合は、デメリットになりやすい部分を理解しながら、設計の方法や工夫によって中庭(コート)のメリットを最大限に生かす設計が求められるように思います。

* デメリットの項目でさらに詳しく知りたい場合や、ご質問があればお答えしますので、メールにてご連絡ください。

第十二回 「私の中庭(コート)論」
中庭のある家のメリット(魅力)

 これまで、中庭(コート)のある家が、家族や暮らしにどんな恩恵をもたらすのかを、子供、夫婦、二世帯住宅を取り上げて述べてきました。今まで中庭(コート)のある家のメリット(長所)と言われてきた事項以外に、精神的、情緒的にも従来の住まいにない安らぎを得られることも述べてきました。また、中庭(コート)のある家のデメリット(短所)といわれている部分についても、短所を長所に変えたり、短所を設計の工夫によって補い、クリアにすることができることを述べてきました。

 ここで、あらためて中庭(コート)のある家の魅力を確認してみましょう。
 
 ①十分な採光:どの部屋も明るくなります
 ②十分な通風:空気の循環が良く、風通しが良くなります
 ③解放感:同じ面積でも実際の広さ以上の感覚が得られます
 ④安全な子供の遊び場:中庭で、プール、砂場遊び、ブランコ、その他
 ⑤プライバシーの確保  
 ⑥防犯面の確保
 ⑦アウトドア、DIY:第二のリビングとして、バーベキュー、食事、ブランチ
 ⑧二世帯住宅の場合:家族同士の程よい距離感をつくりだしてくれます
 ⑨「縁側」の機能:かつての縁側のように、子供、両親、老人の居場所となります
 ⑩癒(いや)しの場:外の社会で抱えたストレスや緊張を解消する役割を果たします 
 
 ①~⑥までは生活するうえで欠かせない、「明るさ」「通風」「安心」をもたらしてくれます。(前提として設計の工夫や設計者の資質によって完成度が変わります)
  
 ⑦~⑩は従来の住宅とは異なり、暮らしの豊かさと幅を広げます。健全な住まいには現代の住まいのように用途別の部屋ばかりではなく、住まいの一部である中庭のように、無目的な場(あえて目的を持たせない場所)は必要です。きっとメンタルな面で心の拠り所となるはずです。
 隣家と軒を接して建つ現代の住宅環境。その中で、プライバシーを確保しながら、自然を呼び込み、室内と室外が一体となった豊かな住空間と精神的な居場所を確保しようと思うとき、「中庭(コート)のある家」は、今日最も有効な設計手法の一つでしょう。 
 

* 掲載した文章で分からない部分や、ご質問は何でもメールかFAXでお寄せください。また「中庭(コート)のある家」の新築やリフオームのご相談もお気軽にお声をかけてください。