中庭のある家 web catalogue| 株式会社 横山彰人建築設計事務所 設計コンセプト


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住まいのパンセ~いい家を建てるために。

第4話 玄関は「家の鏡」

 縁側、土間、床の間、広い勝手口など、かつての日本の家には、今日あまり目にしなくなったスペースがたくさんありました。ところが、敷地の狭小化や住まいの合理化と同時に、一見無駄とも思えるこうした空間がどんどん切り捨てられてしまいました。捨て去られた空間が、ほんとうに無駄だったのかについての考察は別の機会にするとして、今回は玄関の話です。

 今日の玄関のほとんどは、出入口としての機能だけを備えた最小スペースです。設計の打合せでも、とにかく居住スペースが優先され、玄関に求められるのは収納の充実のみです。しかし、玄関には出入口としての機能だけでなく、住む人の人柄や暮らしぶりを感じさせる「家の鏡」という要素があることを忘れてはなりません。大切なお客様を迎える場として、家族が毎日気持ちよく出入りする場として、玄関は居心地よく、美しい空間であるべきです。昨今、近隣社会とのつながりが薄れつつありますが、昭和30年代頃までの家の玄関は、土間空間を合わせもったり、スペースも広く、子供の遊び場であったり、近隣の方々とのコミュニケーションの場でもありました。

 敷地が狭く、限られた建築面積だからこそ、今日の玄関には細やかな配置が必要です。玄関に靴やアウトドア用品があふれ返っているのは論外ですが、収納の充実のほかに配慮しなければならない要素があります。やわらかな照明計画、風通し、加齢配慮したベンチや手摺り、玄関框(かまち)の高さにも気を配り、さりげない一枚の絵を飾るスペースや花台などのコーナーも設けたいもの。私の設計では、玄関に入った時に中庭に視線が抜ける工夫をよくします。視線が遠くまで届くことで実際の面積より広く感じられる効果が得られますし、中庭に植えた緑や季節の花を楽しむこともできます。玄関やエントランスに対する設計上の配慮、住む人の気配りは、訪れる人の心をなごませます。玄関は、設計のスタートの段階から詳細に検討しなければならない、とても大切な場所なのです。

説明図