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住まいのパンセ~いい家を建てるために。

第1話 天井裏の無駄を考える

 住まいの性能はこの十数年で飛躍的に高まりました。地球温暖化の問題を受けて、建物の気密性・断熱性を高め、エネルギーの無駄をなくすことに力が注がれてきたからです。これに対して、空間の無駄について語られることは少なかったように思います。私は都市部などの限られた敷地で住まいの設計を行なうことが少なくありませんが、設計をする際に重要視することのひとつに、空間の有効利用があります。一般的な家は屋根をかければ屋根裏ができます。通常の切妻屋根や寄棟屋根であれば、少なく見ても全容積の1/4ほどが屋根裏として捨てられることになります。100㎡(約30坪)の家であれば、25㎡(約15畳)もの部分が無駄になっているのです。もちろん、屋根裏はタダで得られるものではなく、それ相応の費用が投じられています。

 上手な設計とは、本来こうした無駄な空間をいかに有効活用するかを考えることだと思っています。ハウスメーカーや多くの建設会社が建てる家を見ても、せいぜい階段下にトイレや収納をつくる程度です。会社の体質や部材の規格化がそれを妨げていることもあるのでしょう。ところで、今日家づくりをする際、間取りには関心があっても、空間利用に無関心なのはなぜでしょう。想像するに、平らな屋根の鉄筋コンクリート構造が輸入され、平面により関心が向けられたこともあるのでしょう。私が受けた建築教育もそうでしたし、「空間」から関心が離れてしまい、間取りだけが建築の重要課題と誤解されてしまったのです。

 私の好きな建築家、吉村順三氏も空間利用について、家の断面図の黒い部分(構造体)が少ない方がよい建築だと話しています。つまり、内部空間を無駄なく使った家がよいというのです。天井を抜いて吹き抜けを設けると冷暖房費が無駄になる、と反論する人もいるかもしれません。けれど、建物全体の気密・断熱性が向上した今日の建築では、そのマイナス面も相当改善され、それよりも適度なプロポーションの大空間がもたらす「余裕」や「心の豊かさ」の方が価値があると言えるでしょう。将来吹き抜けの一部に床を張り、ロフト空間とすることもできます。子供のプレイルームやお父さんの隠れ家的な書斎にもなるのです。そもそも、天井裏に暗闇をつくり、そこに埃が溜まっていくことを考えても、気分のいいものではありません。シンプルな暮らしを潔しとする人は少なくないでしょう。住まいも同様、構造や空間に無駄をなくしてシンプルにすることが大切です。

説明図