中庭のある家 web catalogue| 株式会社 横山彰人建築設計事務所 設計コンセプト


HOME > 住まいのパンセ~いい家を建てるために。

住まいのパンセ~いい家を建てるために。

第2話 「ドア」と「引き戸」の違いを考える

 日本の住宅にドアが普及したのは、戦後アメリカの生活様式が取り入れられてからでしょう。それまでは、部屋と部屋、部屋と外部を仕切る建具は障子、襖、板戸などの引き戸が主流でした。障子や襖にくらべ、ドアはプライバシーを守る優れた装置として大いに歓迎され、今日に至っています。しかし、私は未だにドアが日本の住まいに定着したとは思っていません。私が住宅を設計するとき、ドアは必要最小限に抑え、できるだけ引き戸を使うようにしています。その理由のひとつは、ドアが開閉にスペースを取り過ぎるからです。ドアの幅が80㎝だとすると、半径80㎝の扇型のスペースをドアの数だけ確保する必要があるのです。欧米のように広い家ならよいのですが、日本の住宅におけるドアの面積被害は絶大です。限られた空間を有効利用するという点で、ドアは引き戸に比べて圧倒的に不利なのです。

 引き戸を使う理由は他にもあります。それは家族の関係性を大切にしたいからです。子供室にドアをつけて密室性を高めると、いちじるしく子供とのつながりを損なってしまいます。狭い日本の家で、家族が互いの気配を感じつつ適度な距離感を保って暮らす。これは日本人の知恵であり、そんな住環境の中で日本の子供たちの情緒も育まれてきたのです。あえて口に出さなくても互いに日々の気分を察することができる……そんな家族関係は、時代がどんなに変わっても失ってはならないものだと思います。ドアでなく、引き戸を多く用いる平面プランは、設計者の腕がひときわ問われるような気がします。ほどよく見えず、かといって気持ちが開かれているという程度。そんな微妙なあんばいをいかに図面に落とし込むか、私は設計する上で常に気を配っています。

 高温多湿な日本の風土を考えても、やはりドアより引き戸がふさわしいと思います。ドアも全開にすれば風が通りますが、引き戸のように風をコントロールするのは苦手です。引き戸なら全開にすれば大きな開口が得られ、閉じればドアほどの密閉性はないものの立派な間仕切りになります。さらに、少しだけ開いて風だけ通すことなど自由自在です。利便性や機能性のみを優先させて、長い年月をかけて培われた日本の住まいの良い部分が失われつつある昨今、引き戸の良さをあらためて見直してみてはいかがでしょう。

説明図