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家を建てる02

ハウスメーカーと建築家の違い

「自由設計」というキャッチフレーズの落とし穴

最近はパンフレットに、「自由設計」をキャッチフレーズに掲げているハウスメーカーもありますが、その実態の多くは、本当の意味での自由設計とは違って、予算の上から広さを決定し、一定の規格の中でパズルのように並べ替えていくだけの作業を意味しているに過ぎません。しかも工場で大量生産体制をとっているため、「自由設計」といいながら、壁や開口寸法、屋根形状などには、驚くほど制約があるのが現実です。

ハウスメーカと建築家の違い

IMGP3492.jpg殆ど予備知識がなく家づくりが初めての建主と、最初から一定の枠内でしか発想しないメーカーの営業担当者が作るプランは、自由設計とは言えません。彼らの提示する家族像はあくまでパンフレットの中だけにいる虚構の存在であって、自由設計をうたいながら、その実、予算と部屋数を合せて組立てていくだけなのです。

初めて家を建てる人は、「自由設計」の意味が分からず、間取りの組み合わせが設計そのものだと誤解してしまいがちですが、全く違うということを認識すべきでしょう。建築家が家族像を読み取っていくプロセスでは、建主が思ってもいなかった問題や、そしてまた、考えてもみなかった提案や解決策が見出される事があります。

住まいの善し悪しは、最初の段階での家族像の読み取りや土地の読み取りが成功するかしないかで決まるといっても、過言ではないのです。この視点・プロセスを著しく欠いているハウスメーカーは、真の意味で、住まいの作り手とは言えません。

私の事務所に設計依頼の相談に見える方々はもちろんのこと、講演などに呼ばれた時にもよく耳にするのが、「建築家に頼んだ場合とハウスメーカーが提供する家を買う場合とではどう違うのか」という質問です。この質問に対する答えを単純化すれば、「フルオーダーで家を建てるか、既製品を購入するかの違い」 という回答になりそうですが、実はそれほど簡単な話ではありません。

そこであえて、建築家とハウスメーカーの違いを三つに分けて考えてみましょう。

まず一つめは、家族像のとらえ方の違いです。

模型建築家は、建主一家と何度も打ち合わせを重ね、家への要望を聞き取りながら家族の性格というか、家族の実像を見出すことに努めます。

したがって、一人の建築家が設計した家は、ほぼ同じ大きさであっても、住まう家族が異なれば、建物はがらりとその姿を変えてしまいます。

一方、ハウスメーカーは、企業独自の調査やデータに基づく家族の平均像を描き出し、そのイメージに合わせた商品開発を行うので、どうしても最大公約数的な家族像になってしまいがちです。

すなわち、「家族構成は夫婦と子ども二人で一家の年収は500万円、一次取得者」といったような顔も性格も見えない無機質な家族像しか想定していません。

これは衣服のメーカーが人間の体格をSML方式で規格化しているのと全く同じ発想です。

しかし、Mサイズの枠に当てはまる体型であっても、肩幅や腕の長さが人によって異なるように、平均的な家族像には収まらない家族もいるはずです。

こうしたところに規格と実像の解離を生み出してしまう構図があると言えるわけです。

二つめに、生活動線と家族空間の考え方が挙げられます。

住宅という商品を規格化するためには、間取りや部屋の配置についても定式が必要になり、その定式から遠くはずれた商品をメーカーは用意しきれません。

これは、カタログには掲載されていても、店頭には置かれていない製品があることに似ています。これも合理的な経営を優先するがゆえの判断なのでしょう。ただこれにより、ハウスメーカーは六割の顧客が支持してくれる製品しかラインナップに加えられず、新しい商品を開発したとはいっても、似たり寄ったりの印象から脱却できないのです。

では、建築家が関わった家はどうかといえば、新築の場合、もっぱら一からの作業ですから、土地や予算の事情に合わせてオリジナルの提案をすることが可能です。

ここで言うオリジナルとは、もちろん、家族にとってのオリジナルであり、世界にたった一つだけの家が完成することになります。

三つめは、建築素材の選定と使い方です。

住宅展示場の家は、そのほとんどが新建材で構成されています。

昨今は技術力がアップしたため、一見しただけでは天然素材とは見分けがつきにくくなっていますが、ハウスメーカーの多くは「もどき素材」が使われていると考えていいでしょう。

例えば、家の正面を飾るドアは、重厚そうに見えても中は空洞で、木目の柄が印刷されているアルミニュウム製です。また、遠目にはレンガや石に見える壁も実はプリントで、手で触れた感触はビニールのそれでしかありません。

水はけが良く、汚れにくいという特性を持っていますが、温かみのある風合いとは言えません。

室内に落ち着いた印象をもたらしてくれる畳もその芯に使われているのは、発泡スタイロ樹脂であり、こちらも「化学畳」に過ぎないのです。

この他、数え上げたらきりがありませんが、ハウスメーカーが提供する住まいは、工期の短縮と経済効率を優先した製品であり、商品です。

したがって、自然の営みがゆっくりと時間をかけてつくり上げていく天然素材とはそもそも相容れない性格だと言っても過言ではないでしょう。

では、建築家がたずさわるオリジナルの家ではどうなるのか?

100%新建材を使わないということは、防災の面やコストの面でなかなかできませんが、天然素材にこだわりたいという要望があるならば、建築家は最大限、要望に応えるよう努力します。

問題は予算との兼ね合いなのですが、少なくとも目に触れたり手に触れる部分にはすべて天然素材を使い、それ以外の箇所にはむしろ積極的に新建材を用いるという方法もあるでしょう。

また、時機を見て素材を交換できるように、リフォームを前提とした設計を提案し、あらかじめ自由度を備えた家づくりにしておく手もあります。

家族にはそれぞれの事情があり、あらゆるかたちでの成長を見込みつつ、それを設計に織り込んでおくのは、「家族とともに家も育つ」という発想を基軸にしているからです。

さて、ハウスメーカーの商品企画と建築家の設計プロセスに焦点を当てて考察してきましたが、ハウスメーカーと建築家との明確な違いが見えてくるのは、実はこれからです。

ハウスメーカーは、工事の着工前にすべての素材、色、照明設備なども決定し、あとはひたすら完成を急ぎます。効率良く工事を進め短期間で完成させるには、このやり方が最もふさわしいでしょう。

しかし建築家は、工事の最中に壁の色やタイルの質感などを建主とともに確かめながら最終決定をうながしていくようにしています。

なぜこのような手間をかけているのかと言えば、素材の色や質感ばかりではなく、窓の大きさや高さ、照明器具の種類やスイッチの位置などは、実際に空間の中に立ってみないと判断がつかないからです。

平面図や立体模型では問題がないように感じられても、窓から見える風景や太陽光による色味の変化といった問題は、現場抜きには実感できません。

こうしたプロセスを経た家と、工事計画にのっとって着々と建てられただけの家とでは、どちらに愛着が湧くでしょう。もちろん、前者であって欲しいと私は願います。

ハウスメーカーと建築家とはどう違うのか。その本当の答えは「他人任せにしてしまう家づくりと、積極的に関わろうとする家づくり」という、家を建てようとする人の本音の中にあるような気がしてなりません。




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