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子供と住まい01

子供のための子供部屋

「家は何のために作るのか」という質問に、「子どものため」と答える人が多いなか、実際、社宅や賃貸住宅に住んでいる家族が、新しい家を持つ大きな動機の一つに、子ども部屋を与えるため、というケースが目立ちます。

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住まいの部屋割りは、お年寄り、親、そして子どもと序列が明確でしたが、子ども優先社会になってこの構図は逆転し、住まいの中で最もよい場所に子ども部屋を作り、できるかぎり広さと快適さを求め、それが子どもへの愛情のバロメーターのような風潮さえ生まれました。

子ども部屋優先の発想が、住まいにどんな影響を与えるのか、子どもの成長にとって、よい方向へ繋がっていくのか、こうした重要な要素はまったく検討されないまま、横並びの子ども優先社会が続いているような気がします。

子ども部屋の与え方については、よくアメリカの子ども部屋が引き合いに出されますが、生活習慣や子ども部屋の考え方が、日本とは大きく異なります。

アメリカ社会は、子どもが生まれてほどなく、親から離れたベッドルームに寝かせる習慣を持ちますが、その一方で、親は部屋の整理、消灯の時間、親がドアをノックしたら必ず開けるといった、部屋の管理やルールを徹底的に躾けるといいます。
「家づくりは人間づくり」といわれるように、住まいは子どもにとてつもなく大きな影響力を持っています。

子供のための子供部屋コラム間取り図


幼児にとっては、家が環境のすべて

近年の住まいは、高度成長期やバブル期を経て、めざましく変容を遂げていくなか、とりわけ、住環境の激変が乳幼児にどのような影響を与えるかといったことは、顧みられることが殆どありませんでした。

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乳幼児にとって大切なのは、親の十分な愛情とそれを包む環境です。0歳から12歳頃までの大切な時期に、親がとんな教育と環境を与えることができるかが問題です。

脳科学者の澤口俊之氏は、脳が急速に形成される乳幼児期に最も大切なポイントとして

①「母親と愛情たっぷりの密接な関係を持つこと」

②「豊かな言語環境」

③「ハイハイが十分できる環境」

の三つを挙げています。

しかし現実は、這うだけのスペースがない狭い部屋では家具を伝って伝い歩きで移動できるので、乳幼児が努力して這う必要がなく、這わずにいきなり伝い歩きを始める子どもが増えているといわれます。

子供 ハイハイ

ハイハイさせる段階を踏んでから、自ら立って歩く段階に進む一連のプロセスが、発育上必須とされているのに対して、乳幼児と同じ低い視線で部屋の中を見直してみると、電化製品、電気コード、テーブルや椅子の脚など、邪魔で危険な物がいっぱいです。


従って母親は目を離すことができず、結局はベビーサークルに入れ、テレビやビデオを見せてしまうことも多いようです。

建築家としていつも感じていることですが、これまで住まいを考えるとき、機能性や利便性に重きを置いてきましたが、住まいを構成する材料についてはどうでしょうか。住まいのあらゆるところに使われている新建材は、子どもにどう影響しているのでしょうか。

高気密、高断熱が過度に普及したため、南から北へ風が抜けるといった間取りを考えるより、負荷をすくなくするため開口部の面積を小さくして、部屋を並べて後は機械で制御しようという傾向が強く、自分で外に出ることもできない乳幼児は季節の暑さ寒さの体感温度を自然に見につける機会が少なくなっています。

一時カブト虫やホタルが分からない子どもが話題になったように、新建材に木目がプリントされている、いってみれば紛い物の材料を本物の木と思ったまま成長してしまうことが、子どもにとっていいはずがないでしょう。

近年、0歳児教育をはじめようとした乳児教育が盛んですが、教育以前の重要な問題として、住まいや住環境を考え、失ったものをもう一度検証することによって、改善できることはたくさんあるはずです。

子どもにふさわしい部屋

密室化された子ども部屋が、さまざまな少年犯罪において深く事件に関与しているとう議論の中で、「子ども部屋廃止論」や「弊害論」、そして「理想の子ども部屋」が繰り返されます。
長期の引き籠りや、親子の会話不足など、親が子どもと子ども部屋の空間をコントロールできなくなっているという現実が、こうした議論を生んでいるのです。

一方で、理想の子ども部屋のプロトタイプを雑誌や本に求めても、見つかるわけではありません。

つまり、理想の子ども部屋の雛形などないのです。一つとして同じ暮らしがないように、間取りや子ども部屋も、家族のライフスタイルや家庭教育、自立の状況によって変わってくるはず。これまでのような安易な与え方をやめ、どんな親子関係を作りたいのか、どんな家庭教育をしたいのかという前提から、理想の子ども部屋が考えられるべきでしょう。

子ども部屋が大きく普及した背景のひとつに、高学歴社会に対応した受験勉強のための部屋という位置付けがあります。外からの騒音、内からの生活昔などさまざまな音を防御する静かな部屋で、広さも、机、ベッドを置き、なおかつ友達を呼べる六畳くらいの広さが想定されたのです。

しかし本当に、勉強のために、外のざわめきや、家族の話し声さえ消してしまう必要があるのでしょうか。住まいの核でもあるリビングルームやダイニングルームの広さを犠牲にし、また夫婦の寝室を「寝るだけ」 のスペースにしてまで、一人の子どもに六畳を与えてよいのかを再考するべきです。

吹き抜けの天窓から差し込み、刻々と室内を移ろう光。個室に閉じず、自然を感じることができる開かれた住まいは、家族の一体感を生むだけでなく、子どもの感性を育みます。
新鮮な発見や驚きに満ちた毎日を送れる住まいでありたいものです。





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