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夫婦と住まい03

夫婦にだって個室は必要

夫婦の寝室イメージ住まいを設計する時、家族に書き込んでもらう住宅調書では、主婦が住まいの中で一番興味を持っている場所は、まずリビングルームとダイニングルーム、そしてキッチンです。最下位近くにかろうじて、「自分の部屋」が挙げられていますが、東京ガス都市生活研究所の調査によると、八割以上の主婦が、自分専用の部屋を持ちたいと望んでいます。

この数字を併せて分析してみますと、美しいキッチンや家事室の充実といった家事労働の場も重要だけれど、自己実現のための発進基地となる自分の部屋にも、目を向け始めていることがわかります。

30代から50代までの主婦の興味の対象は、結婚後10年は、夫と子どもに注がれていますが、10年目を境にして、趣味や自己投資、そして食べ物や旅行に移っていくという調査結果もあります。

にもかかわらず、「住まいの中で一番興味を持っている場所」という優先順位の中には、自分専用の空間が低い順位でしか現れていないということは、夫の書斎もなく、他の部屋も充実していないのに、主婦専用の部屋とは言い出せずにいるだけではないでしょうか。

女性にとって、なぜそれほど自分の部屋が必要になってきているのか。

一つには、専業主婦が減って共働き家庭が増え、これまでとは違ったストレスに曝される場面が多くなってきていること。ストレスを抱えたまま、自宅に帰っても、現代の住まいは寝室、子ども部屋、ダイニングといったように、部屋自体が個別に目的化してしまっていますから、自室がないと、居場所すら見つけだすのが難しいのです。

書斎夫の書斎の要求度も、ますます高くなっています。働きパテ症候群や、帰宅拒否症候群が示す通り、かつて父親は、家庭より会社のコミュニティで過ごす時間の方が長く、家庭や地域社会のことはもっぱら母親に任せてきました。

ある種、居心地の良かった企業社会が、終身雇用制度の見直しやリストラで、ストレスに曝される苛酷な環境と化してしまった今、住まいに何をするでもない一人だけの部屋を欲しがることは十分理解できます。一人専用の部屋が欲しいという気持ちは、妻も全く同じなのです。

よく、夫や子どもがいないとき、家全体が妻の部屋だと言われますが、一人になれても、自分の空間ではありません。つまり自分一人の時間は作れても、自分一人の空間はどこにも見当たらないのです。

ここ10年、私の設計事例でも、かなり明確な意志のもとに、専用室、あるいは専用コーナーを作ろうとする主婦が増えてきています。

資料やファイルの収納棚、本棚の奥行の寸法、パソコン用専用回線、FAXの置場、色々な資料を広げた場合の机の広さなど、極めて具体的な論点について話し合うことができるのは、仕事はもちろん、自己実現のための勉強や、子どもや学校、地域社会に関することなど、やりたいことが明確だからこそ、簡単な本棚と机しかない男の書斎から較べると、実に機能的で活動的です。

結局、男性がサラリーマンとしてのライフスタイルは持っていても、個人としてのライフスタイルは持っていなかったため、画一的な書斎しか持ち得なかったとも言えます。

今後、男にとっての書斎が、単に一人になれる場としての部屋であり続けるなら、妻や子どもの目から見て、その存在感はますます希薄化することは間違いないでしょう。








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