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ライフスタイル01

小さなパラダイス

会社にも家にも、居場所が見つからない。社会には、たくさんのストレスが溢れています。

建築家として住宅設計を通して住まいを見ると、さまざまな現象に出会います。

中庭をのぞむテラス近年多い夫婦別寝室、家庭内別居や主婦の専用室、子ども部屋優先の住まいづくり、父親の住まいでの居場所の喪失など、社会や家庭における家族個々人の存在感や力関係の変化が、住まいにそのまま映し出されています。

家が生産の場であった時代や、父権が家制度によって守られていた時代には、茶の間や囲炉裏で父親の座る位置は決まっていましたが、現代の住まいには、父親の居場所はどこを探しても見当たりません。

食卓のダイニングテーブルには、必ずしも父親の定位置はないし、そもそも、食卓に家族全員が揃って食事をする回数も、極端に減っています。

三井不動産が過去に行った、30代家族の食生活についての調査では、週二回以上一緒に食事をしている家族は二割を切っているのが現状で、驚くことに、全く食事を共にしない家族や、月に一回~二回という家族が、合わせて二割以上という結果でした。

食卓の崩壊は、父親の居場所の喪失ばかりではなく、コミュニケーション不足による家族の個別化に拍車をかけます。

子どもには立派な子ども部屋がある一方、夫婦にとって寝室はただ寝るだけのスペースで、ゆっくり話すこともできず、リラックスできる自分の部屋とはとても言えません。

住まいを設計し完成してから、久し振りにお宅を訪問することが楽しみですが、タバコが大好きなお父さんが、キッチンの換気扇の下で灰皿を持って吸っている姿を見たとき、設計の時、なぜ自由にタバコを吸える場所や居場所づくりを主張しなかったのかと首を傾げました。

住まいは家族が一緒に暮らす場であると同時に、この時代だからこそ、自分が一人に戻れる場を諦めず作るべきなのです。その空間が当面、自分の逃げ込む場でしかないとしても、いつか積極的な生産の場や、大切な癒しの場になることも、あり得るのではないかと思います。

便利・快適ばかりではなく、狭いなら狭いなりの豊かさを求めるべきです。

どんな所でもいいですから、一人になれる場を作ってくださいと言われ、ウォークイン・クローゼットの片隅に苦労して空間を確保した例や、屋根裏の穴倉のような部屋をひねり出したこともありますが、でき上がってみると、意外に快適な空間となりました。御主人はその部屋を"小さなパラダイス"と名づけ、読書やタバコ、時にはお酒も楽しんでいるそうです。

家族団欒の場ももちろん大切ですが、住む人それぞれが、住まいの夢を語れないところに問題があるのです。









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