建築家が建てる狭小中庭住宅の平面プランができるまで。
(3ページに渡って解説しています。)
わずか24.48坪の狭小住宅でも、住み良い暮らしの出来る「中庭の家」の特集です。
※T邸は住宅雑誌『ナチュナル派の家づくり』子どもがすくすく育つ家にも掲載されました。
お客様からも質問でどのようなプロセスを経て平面プランが出来るのかといった問い合わせが非常に多いのですが、実際に建築家が建て主にどのようなプランニングを行ない、工夫を凝らしているのかを具体的に公開している設計事務所は少ないのではないでしょうか?
ここでは、実際に土地探しからお手伝いしたT邸を例に今まで知り得なかった建築家のプランニングの詳細について解説いたします。
※お引き渡し時の写真のため、中庭の植栽はまだ植えられる前のものです。
■ 設計の考え方
・ 今よりも環境が悪くなっても、十分な太陽の光、風が流れ、緑あふれる環境の確保。
・ 家族4人のコミュニケーションを育み、家族の絆が住むほどに深まる間取り。
・ 今の家に欠けている、子どもの夢と創造性を育む(T邸は男の子二人)家族空間。
■ Tさん家族の主な要望事項
・ 小さくても出来れば中庭(パティオ)が欲しい。 (安全な子どもの遊び場。 家族だけの庭。)
・ Tさんは事務所のホームページから中庭の家を見てのご依頼でした。
・ 子どもがのびのびと過ごせる、住んでいて明るく楽しい住まい。
・ Tさんのキーワード : 家族の団らん、収納、太陽の光、風、緑。断熱、セキュリティー。
建て主の望む子どもがのびのびと過ごせる、住んでいて明るく楽しい住まいになったのではないかと自負しております。建売のように住まいの形に家族を押しこむのではなく、家族の住まい方を丁寧に作り込むことによって、実際には狭小地でもこんなにも住みよい家に仕上がるのです。
1階~中2階
中庭の植栽を囲むように玄関からプライベートルームが配置されており、中2階と地下スペースを取り入れることで、狭小地でありながら、豊かなリラクゼーション空間が実現されている。中庭の植栽をながめながら四季折々の変化を楽しめます。中庭案を取り入れる利点は数多くありますが、最大の利点は圧倒的な開放感と明るさの実現にあるような気がします。それに付随して一見すると矛盾する『開放感』と『プライバシーの確保』という、2つの要素の両立している点も見逃せません。
DIY。家族の思い出を刻む
家は新築でも増改築でも、家族にとってとても大きな記念すべき出来事です。
特に子供にとっては一生思い出に残る事かもしれません。どこで生まれ、どこで育ち、どんな環境で過ごしたかはとても大切です。
下記の写真は、今回新築し完成したT邸の玄関アプローチ階段部分に、二人の子供さんの手形を記しました。家の完成時、こんな手形や記念樹を植えたり、なにか家の誕生を記念するものがあれば、何年たっても当時を思い出し、家の愛着も深くなってくるのだと思います。子供にとっても成長し家を離れた時でも、見るたびに幼い時を思い出し、幸せな気持ちになるのではないでしょうか。
2階 リビング 家族が集う中心的なスペース
二階のほうが光を採り入れやすく、風通しがいいという点に加えて、家族が集まる部屋はできるだけ広いほうがいいという考えにも関係します。一階では、天井を高くするといっても限界がありますが、二階ならある程度は余裕をもたせることができるので、空間を縦にも広く設定できます。また、天井の形状についても、一階よりは変化をもたせていろいろな表情をつくることができるのです。
回遊性のあるプランは子供の創造性も育まれます。
子どもが走りまわる様子が、リビングから見えます。子どもが思い切って走れる場は、家には必要だと考えています。
子どもの気配も伝わるロフト空間
スリットから子どもの気配も分かります。穴から子どもが落ちないよう、それでいて出来るだけ広くと計算されています。天窓を設置する利点は、例え四方に建物が隣接しているような立地条件でも建物のせいで時間帯によって光が遮断されることがなく、明るい光を部屋全体に行き渡らせることができます。将来手摺の部分に扉をつけ、個室にするため下地に配慮もしています。
またロフトに上り夜空を眺めながら子供たちに絵本などを読み聞かせるのも良いでしょう。
ロフト階平面図
ロフトの扱いも不思議なことに各区によって扱いが異なります。
階段、面積、開口、採光の取り方、天井の高さ、など様々な規制がありますが、知恵の出し比べです。
次は、どうすればこのような住まいを実現できるのか、実際の宅地に建てる段階からお話を致します。